「アナタ」と僕はよく言う。 あまり、名前で呼ぶことが得意ではないのだ。 だからよく「アナタは…」というのだ。 あたしももう「ごめん」っていわないから「あなた」っていうのやめて。 あの子はそう言った。僕はたまに無性に「あなた」と呼びたくなった。 …

3月だっていうのに冷たい風がふいていてちょっとだけ寒い。 コンビニに晩御飯を買いに行った。 もうすっかり忘れたもんだと思っていたのに、ちょっと背格好 が似ている人を見つけるだけで、倍速で動き出す。心臓。 そのコンビニをスルーして先のコンビニに入…

3月の終わりだってのにずいぶんと涼しい。 月が満ちているからか、部屋の外からはパトカーのサイレンや 盗難防止の警報音や謎の叫び声なんかが聞こえてくる。 珍しくのんびりとテレビをみている土曜の夜に。ふとある女性 のピアスが目に入る。普通は気にしな…

僕は、過去にしがみつくのが好きなようで、よく写真を見たりする。 もともと「写真が好きだから」と防衛線を張っていたりするが、結局は 言い訳。それだけ。 写真と音楽は、時間を飛ばす。 それを見たり、それを聴いたりすると一瞬にして時間を飛ばしてくれ…

彼女はいつものように到着の3分前に電話をしてきた。 僕は、クシャクシャのシャツを羽織って靴を履いた。鍵は掛けない。 4階から見下ろすと彼女の車が入ってくるのが見える。 いつもの白い軽。 「どこ行く？」 「お腹すいたよ」 「何食べたい？」 「米？」 …

2:00彼女は寝ていて。 僕は起きていて。夜中なのに明るい。 窓から入る月明かりは眩しいぐらい。床に座り、後ろで寝ている子をおこなさないように僕は、そっとテーブルから煙草を取り火をつけた。白いちゃぶ台の下には、線香花火が転がっているのが目に入る…

世間では連休が終わって、また忙しい日々が帰ってきた様子。 連休中はガラガラだった駐輪場も今日はいっぱいで。 今日はすごく天気がいい。シャツ一枚はおればちょうどいい。そんな季節。ああ、またこの季節になったんだなぁと、ちょっとだけ思い返した。 彼…

つっかけた革靴に砂が入らないように慎重に歩く。 間違えないようにそっと足を一歩一歩丁寧に運ぶ。暖かくなってきた日曜日の海岸は人が多く。 それぞれに砂浜にいる。一人で海に来るやつなんか僕ぐらいのもんかと思っていたが意外に多くて。 皆なんで海にく…

席からあたりを見回しても知った顔などおらず、みんな一緒に見える。 同じブレザーに同じネクタイ、そして同じ靴。きれいにお行儀よく並んでいる。 周りの子らは、知り合い同士も多いようで、結構いろいろと話したりしているが、 僕は面倒くさいのと若干の緊…

大学２年の春。１人の女の子と知り合った。友達の家で飲み会 があるからと行くと、そこにいた。彼女は新入生だった。関西 から出てきた彼女は幼い感じはしたが、可愛い子だった。その時、遅れてきた僕が適当に座った隣に彼女はいた。最初の印象は「あら、可…

大学のとき。僕は大分にいた。 そのとき、知り合いがCDを出したともらった。 その中に入っていた曲にこんなタイトルのものがあった。そのときは正直よくわからなかった。 けど、半年ぐらい前の自分を今思い返すと。ちょっとだけわかるような気がする。 愛が…

夕方16時45分 僕は、いつものように銀河鉄道999の再放送を観ていた。彼女が 学校から帰ってきた。上着を掛け、彼女は僕の横に座る。 「おかえり」 「ただいま。また999観てんの？」 「日課だから」 「今日は学校行った？」 「行ってない」 「ちゃんといきな…

僕は煙草を吸う。普段はechoを吸っている。吸い込み、吐き出すときに舌が痺れる煙草だ。 といってもヘビーではなく、吸っても一日30本程度。最近、あまりにもついていない僕は煙草を買う金をどうにか節約しようと、巻きタバコを吸うことにした。昔使っていた…

久しぶりに見た夢。何年かに1度のペースで行く場所がある。 もちろん夢の中。 ちなみにこの話には答えも落ちもない。 気がつくと車は森の中で、周りには誰もいない。 車から降りると見覚えの無い陰気な森。そばには湖があり、森の木には蔦だか なんだかよく…